大阪地方裁判所 昭和49年(ワ)3073号 判決
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【判旨】
(2) また、同図面表示のき、あ、い、う、え、お、く、きの各点を順次直線で結び囲んだ範囲の土地については、被告においても本訴訟において原告の所有に属することを認めてはいる。
しかし、<証拠>によれば、次の事実が認められ<る。>
原告は昭和三七年二月二八日本件第一土地を近畿日本鉄道株式会社から買受け、被告は同三八年四月一五日本件第二土地を同会社から買受けたが、原告は右買受け後本件第一土地につき右両地間の境界明示のための標識等の設備をしなかつたところ、被告は買受け後半年位して右両地間の境界明示のために杭を打ちこれに有刺鉄線を張つたが、その際誤つて本件第一土地に侵入して杭打ち等をしてしまつた。その後、被告は本件第二土地上に家を建て、庭を整備する等したが、昭和四一年九月ころから翌年七月ころにかけて、株式会社中本組が被告から前示有刺鉄線のところまでの地域に若干の盛土をするよう依頼を受け、その工事を施行したが、その際本件第一土地及び同第二土地の本来の境界をこえ、別紙第2図面①の赤く塗つて表示した区域の土地(それは別紙第1図面表示のき、あ、い、う、え、お、く、きの各点を順次直線で結び囲んだ範囲の土地をおおよそ包含するものである。)に相当量の土砂を投棄し、被告はその上に生垣をめぐらし生垣内に庭木を植え、灯籠、庭石等を置いて庭として整備した。そして、本件第一土地から同第二土地にかけては、生駒山山頂に連なる馬の背状の急斜面であり、本件第二土地から前記の投棄された土砂を取除けばその後に高さ二ないし三メートルの断崖が出来、崩壊の危険を生じるので、土砂の取除き工事をするには必然的に何らかの崩壊防止のための設備工事が必要とされる地形にある。したがつて、被告の整備、維持している庭を現状のままにしておくには、前記の投棄された土砂を庭を支える土台としてそのままに維持しておく必要があり、現に被告は、右土砂を取除く意思はなく、投棄したままにしている。
右の認定事実によれば、被告は別紙第1図面表示のき、あ、い、う、え、お、く、きの各点を順次直線で結び囲んだ範囲の土地の大部分に土砂を投棄し、これを維持し、原告の本件第一土地の所有権を妨害しているものである。したがつて、被告が右範囲の土地が原告所有地にあることを認めていても、原告が右範囲の土地所有権を確認する利益は存在し、原告の右範囲の土地の所有権の確認を求める請求もこれを正当として認容すべきものである。
三 また、前記二の(2)に認定した事実によれば、被告は別紙第2図面①の赤く塗つて表示した区域の土地に相当量の土砂を投棄し、その上に生垣、庭木を植え、灯籠、庭石等を置き、原告の所有権を妨害しているのであるから、被告は右土砂及びその上の生垣、灯籠、庭石等を取除く義務があるものである。
しかしながら、<証拠>によれば、次の事実が認められ<る。>
本件両土地は生駒山山頂に連なる峰の上にあり、昭和三七年ころから、近畿日本鉄道株式会社が造成のうえ別荘用地等に分譲した三一筆の土地のうちの二筆である。そして原告は、本件第一土地を金六四〇万五、八〇〇円で、被告は、本件第二土地を金五〇九万七、九〇〇円で買受けたが、本件両土地付近の状態は、諸種の環境上の難点から右分譲外の土地は自然のままの山林であり、分譲の対象となつた土地をみても、現実に居住用の家屋の存するのは被告宅を含めて数戸あるのみで、また建築にとりかかりながら中止されて放置、朽廃に任せられているものが数戸あるにすぎず、その余は原告所有の本件第一土地を含めて、全く放置され、雑木、雑草が自然のままに生立するに任せた状態であり、使用価値及び経済的価値は高いものでない(本件両土地の北側に巨大なアンテナを備えた通信設備があるが、これがあることは何ら本件両土地の使用価値及び経済的価値を高めるにつき役立つものではない。)。それ故に、原告も現在まで本件第一土地についてほとんど管理らしき行為をせず、自然のままに放置していたもので、今後も確たる利用計画も立つていない状態にある。そしてこのように荒廃のままに放置された同地の一隅に被告の責に帰すべき投棄にかかる土砂が若干蓄積しているからといつて、さしあたり見るべき実害が生じているわけでもない。それにもかかわらず、原告が被告に求める工事は、断崖の崩壊防止工事のみをとつても、最低金一、一一七万七、六〇〇円と見積られ、被告の負担は土砂の取除き工事も含めてさらに巨額にのぼるのである。
右認定によれば、原告が土砂の取除き工事及び断崖の崩壊防止工事を被告に請求することは、被告に対しその侵害行為に比して過大な負担を負わせ、原告にとつては、わずかの不利益を除去するために過大な請求をすることを認めることに帰する。したがつて原告の右請求は、権利の濫用として許されぬものであり、棄却を免れない。
(戸根住夫 大谷種臣 新井慶有)